私の好きな場所。
朝6時。
紺屋町の高齢者専用賃貸マンション[やらいや壱号館]6階の一室から、見慣れた市街地の景色と米子城跡を仰ぎ、[DARAZ-FM]を聞き流しながら目を覚ます。
部屋の広さは25㎡。トイレ、ミニキッチン、ベッド付の洋間に共益費、食費、生活支援サービスが付いて月14万円。スタッフが24時間、ボタン1つで部屋まで来てくれるので、高齢で心と足腰の弱わった“おひとりさま”の私でも安心して、快適に暮らせる。
施設1階のレストランで朝食を済まし、朝刊に目を通した後、すっかり薄くなった髪の毛をちゃっちゃとセットして、近くの[ほっしょうじ通り]にあるコンビニエンスストアまでブラブラと散歩に出かける。
[ほっしょうじ通り]は、平成22年にアーケードを撤去し、全国的にもめずらしい、芝生を敷いた商店街。完成から20年が経ち、芝生や樹木の成長と共に新しい店舗と賑わいも増え、新しいまちづくりのモデルとなっていた。
午後は、太陽光発電を使って充電した電動の超小型車に乗って、アーケードがなくなり明るくなった本通り商店街を散策。右手に、おしゃれで個性的な若者で賑わう[SKYビル]を見上げながら、懐かしい歌声が漂う[笑い庵]で一服して、旧加茂川沿いの白壁土蔵まで足を伸ばしてみた。
加茂川沿いの白壁土蔵は、長い年月を経て、今なお市民のまちづくり拠点として残っている。そして[中海・加茂川遊覧船]は5艘に増え、地域の元気な若いNPO団体が運行していた。
旧加茂川は、周辺住民の毎週のゴミ拾いや清掃活動が実り、今では大きなしじみやめだかも見られるようになった。
そして週末には、[ほっしょうじ通り]のEV(電気自動車)シェアを活用し、皆生温泉で日本海を望みながらゆったりと汗を流し、時々は、隣部屋の婆さんを誘い大山まで足を伸ばす。
日本海と大山、温泉や自然、新鮮な食材に恵まれた環境の中で、長年の友と一緒にまちなかに暮らせる幸せ。
高齢になっても安心して快適に暮らせるまち、米子。
官民が一体となって、小さな一歩から始まった、新しい米子の小さなまちづくりは、少しずつ姿を変えながら、20年後もしっかりつながっていた。
私の好きな場所。
それは、20年後も[米子のまちなか]なのである
きっと・・・